その4 手術前

なにしろ自覚症状がまったくないままでの入院なので「当て金」を付けながらも退屈この上なく、さっそく歩き回る。そしてメーリング・リストで仲間に入院を知らせてもらった。片目でしかも視野が極端に狭いためテレビやホンを見ても疲れる。

ヘッドホンで聞く音楽もそう長く続けられるものではない。もっぱら同室の人との会話や食事が楽しみとなる。それとやたらと撮る写真。なんでも趣味にすれば入院も楽しいのだ。しかし回りを見ると「うつむき」の人ばかり、大変そうだ。

手術前日、生まれて初めてまつげを切ってもらった。
 


その5 手術

 予定通り11月11日、手術の日を迎えた。朝1番、8時30分にストレッチャーに乗って病室を出発だ。不安というと「たぶんうつむきはしなくて大丈夫。」といわれていたが本当のところはどうなのかというところ。妻もかけつけて準備が整う。

ストレッチャーに乗せられて廊下を行くと、いまどきの医療ドラマみたいだが、視野が狭くて天井が見えるばかり。この天井は「日東紡のソーラトンだな。」なんて元建材屋の知識が出てしまう。

病室の中で一番症状が軽いと思われる私だけが全身麻酔で手術を受けるのが不思議だったが、あとで説明してもらった。あるいは前もって何度も説明に来てくれたのでその時に聞いたかもしれないが分からなかったのかもしれない。私だけは眼球の外側からする手術だったそうで、(「バックル」と先生は呼んでいたようだ)その手術はとても痛くて部分麻酔では耐えられないそうだ。手術室に行くと、前もってBGMのリクエストを聞かれた時に「ボサノバ」と言っておいたとおり、小野リサの「オルフェのサンバ」がかかっていた。2曲目にアストラッド・ジルベルトがかかって、その曲が終わらないうちに私は眠ってしまった。

手術当日朝、後の苦しみも知らずにリラックスする私。このストレッチャーに乗せられて手術室へ・・・。
    

 

その6 手術終了

 「瀬戸さん、聞こえますか?」って言われて目が覚める。無事に終了したらしい。「はい」と答えたもののまだもうろうとしている。次に気がついたらもう自分の病室に帰っていていつもの風景が見えた。

8時30分に部屋を出て11時頃には戻っていたはずだが覚えていない。とにかく猛烈に頭痛がして気持ちが悪い。昼食は用意してくれて、「食べますか?」って言われたがそれどころではない。ずっと横たわっていたが1時40分頃起き上がろうとして吐いてしまった。本当につらかった。この時と寒くてパジャマに着替えようと思った時の2回ナースコールをした。私が寒がっているのを見てとなりのベッドの人が自分の布団を私にかけてくれた。ありがたかった。6時頃やっとなんとか起きあがって同じ部屋に新たに入院してきた人に挨拶をした。食事をしないと点滴をはずせないと言われて食欲はなかったが夕食を全部食べた。全身麻酔というのはやはり大変なもので、次の日もなんだか頭がガーンとしていた。水分をたくさんとって早く麻酔薬の成分を排出したほうがいいと言われてお茶やポカリスエットをたくさん飲んだ。

手術後の私、ひどく気持ちが悪かったがなにしろここはクライマックス。たしか同室の人にせがんで写真を撮ってもらった。でも表情は作ったわけではない。
 

酸素吸入というのは涼しいのが出てきてスカッとするのかと思ったら暑くて息苦しく感じた。点滴を付けていたため看護師さんに手伝ってもらいパジャマに着替えた。
    

氷まくらで頭を冷やす。枕の横にはちゃんとカメラが。点滴を引きづって歩く。
    

手術後、目薬の数と回数が増えた。安静度表はうつむきに×がしてある。手術後、最悪の状態の時に婦長さんから「瀬戸さん、良かったわね。うつむきなしよ。」といわれて「ラッキー。」と低くつぶやいた。
    

目薬は4本を1日6回差す。5分以上間隔をあけなければいけないので時計を置いてある。13日、同室の人が手術室に向かう。私以外は3人とも部分麻酔で、しかも帰ってきてすぐに食事をしていた。うらやましかった。
 

15階の展望室で行われていたコンサート。毎週水曜日に行われている。聴衆は静かに熱心に聴いている。今日はソプラノ・ボーカルだ。「紅葉」をみんなで一緒に歌った。いいコンサートだった。本当はまだ12階から移動しては行けないのだが看護師さんに目撃されつつも抜け出した。
 

うちのマンションの管理組合の理事長さんが来てくれた。思わぬ偉い人の来訪に飛び起きた。恐縮する。右は同室の人との院内散歩風景。高齢のため運動不足になりがちなので一緒に歩いた。私もひまでしょうがないのだ。この人の姿に自分の父がオーバーラップした。
 

 

変な顔の羅列で恐縮です。手術前と後、毎朝自分の顔の写真を撮った。少しずつ腫れが引いているのがわかる。

 

 

その7 退院へ

 手術後の毎日の診察では「順調です。」「きれいについています。」しか言われず、頭痛はやや残るものの目は順調なようだ。実際同室の4人の中では前の週に手術をした人もいたが退院は私が一番早かった。

退院の3日前に会計から費用の概算をもらった。はじめに外来で来た時に先生から聞いた額に見合う額だった。視力の事は全く気にしていなかったが、前よりもやや視力が落ちると言われて少々へこんだ。

しかし、退院した今では問題のないレベルになっている。退院は18日となり、結局10日間の入院。同室の人ともすっかり仲良くなり、先生や看護士さんとも顔なじみとなり、少々寂しさを覚えるほどだった。

「お見舞いに来ます。」と同室の人に約束して病院をあとにした。

 私自身、入院するのは28年ぶり。病院の設備の進歩は驚くほどだった。インフォームド・コンセントというのだろうか、とにかく何をするにも必ず説明をしてくれて後のフォローもするというのもよく分かった。それに、スタッフの人達がみな笑顔でよく私達の面倒を見てくれるのにも感心し、感謝した。

ありがとうございました。いい経験をさせてもらいました。

 それから、支えてくれた家族と、励ましてくれた友人達にも感謝!

ただいま!
 

 

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